衝動 5



このまま溶けてしまいたい。
溶けて彼女の全身を覆い、いつでもどこでも一緒。
あー、なんか乙女なこと考えてる。母さん譲りかな。
僕も、こんな風にして出来たのかな。複雑な気持ちだ。

「苦しい。」

体を押し上げられた。

「あっ、すいません。」

すぐに横へ退こうと思ったのに、腰を足でがっちり固められた。

「いい。そのままで。」

し、幸せすぎる。
全身からハートマークが出ちゃいそう。
彼女は背中を反らせ、手を背中に廻してブラジャーのフックを外した。
僕が上手く出来なかったせいだな。
後ろを外したからといって、脱げるわけじゃない。まだワンピースに袖を通したままだからだ。
脱ごうとしているので手伝った。
そのうちライトさんが先に脱いで待っててくれたり、僕の服を脱がしてくれるようになったり……。
やばい、にやけ顔になってたかも。
あらためてみる一糸纏わぬ姿。
もっと……明るい所でも見たいな。朝までこのままなら、見られるかな。
また唇を求めた。
唇っていうか口の中だ。体の中に侵入したい。
こうやって舌を吸い合っていると脳が痺れて何も考えられなくなる。下の繋がりとはまた別の快感。
でも止せばよかった。

「あっ」

夢中になってて何かの拍子に外れてしまった。せっかくひとつになってたのに。
さっき、そのままでいいと言われたけど、外れちゃったのに上に乗ったままなのは悪いと思ったからやっぱりどいた。
そのまま許可をもらってシャワールームへ向かう。今更だけど、きれいにしておきたいし。
小規模ながら施設というだけあって、廊下には表示や見取り図に操作盤があちこちにある。足元の光はやっぱり非常灯だったみたいだ。
洗面台の大きな鏡で自分の裸を見て恥ずかしくなった。あの人を満足させられているとはとても思えない。
なんだか切なくなってしまって、洗濯籠から大幅にはみ出ていたバスローブを手に取ってそっと頬擦りをした。
馬鹿だよなぁ。たった今、この持ち主と肌を合わせてきたのに。
自信がないんだ。
だってまだ震えている。
そうだ、自分だけ告白しといて、あの人の気持ちって聞いてない。
どう………なんだ?
聞きたいような怖いような。残念だが、あの人が僕を好きだと言ってくれる場面が想像つかない。
自分で言うのもなんだが可愛いとは思われていそうだ。でもそれじゃあ……。
サッとシャワーを浴びて、来る時とは違って腰にバスタオルを巻いて廊下を戻った。
どんな顔で待っているだろうかとちょっとドキドキしたけど、彼女は窓の外を見ていた。
後ろから、すこしきつめに抱き締めた。
すごくいい匂い。
好きです。
好きです好きなんです。
好きで好きでどうしようもないんです。
体の外も中も全部知りたい。
彼女の口の中へ指を入れた。
舌が絡む。
濡れた指をもう一つの濡れた場所へ移した。
ここも口の中みたいにつるつるなのかと思ってた。
全然違う。
むしろざらざらしてる。それに襞状になってる?
視覚的なものを想像すると結構気持ち悪い気が……。あ、いやライトさんが気持ち悪いって事じゃないです。
指が内壁全体で圧迫されて、やっぱりぐにょぐにょされてるっていうのが的確な―――。

「観察日記でもつけるつもりなのか?」
「わあっ、す、すいません。」

びっくりした。
そんなに夢中になってたかな。

「日記なら、毎日来なくちゃいけませんね。」
「ふ…、私もつけてやろうか?何月何日、今日は前回の測定より何ミリ伸びていました。」
「ちょ……、何がですか。」
「……身長。」
「嘘。」
「……っくっくっく…。」

笑ってる。
楽しい。
すごく楽しい。

「酔ってるんですか?」
「そうかもな。」

顔が見たい。後ろからもいいと思ったけど、やっぱり顔が見たい。
また、仰向けに寝かせてキスをした。何度しても飽きないんだ。

「ああっ‥‥‥」

そしてまた鳥肌。
重なる吐息。
たった14年の人生のくせにと言われそうだけど、ほんとに生きてて良かったと思う。
ずっとこうして揺れていたい。ずっと濡れていたい。
それにしても暑いな。
なにか飲みたいけど、テーブルまで取りに行くには一度外さなきゃだしな。あとにするか。
ああ、でも髪が汗で顔に張り付いて気持ち悪い。
ちょっと止まって髪をかき上げた。
止めたのが刺激になったのか、再開した途端に下から甲高い叫びが上がった。
知ってる、この声。
あの時もこうだった。
あの時は周りに人が居て気もそぞろだったけど。
でも今は、ここには2人しか居ないんだから、どんなに声を張り上げてもいい。
なぜか彼女の体が逃げる。
だめだよ、逃がさない。
今なら。
いまならこう思ってもいいでしょう?
あなたは。
あなたはいま僕の物だ。
だって、ほら。
彼女の手が何かを掴もうとして空を切り、僕の背中を爪の先でくすぐった。
もう力が入らないんでしょう?
わかる。
もうすぐだ。
もうすぐ。
あと少し。



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