寝室の扉を少しだけ開けて、彼女が先に眠っていてくれたのをそっと確かめた。
無理をさせたくないし、クタクタになった自分を見られたくない。
たいして頼りにもならないのに強がってるだけ、と思われそうだから。
戻ってシャワーを浴びて、今夜は別の部屋で寝よう。
体が疲れきっていて、膝から下が自分のものじゃないみたいに重い。
いまにもバラバラになって崩れ落ちそうだ。
けれど見てしまう。
眼があのひとを求めてる。
部屋は暗いし、判るのは人体らしいふくらみと僅かにのぞく髪の毛だけ。
見たってしょうがないのに。
ただ見てたって……。
自分が片想いなのを確認してるみたいじゃないか。
もういいかげんにしよう。
これ以上ここで見ていると石になるどころか砂になってしまう。
疲労のせいで体が熱っぽい。
シャワーを浴びていても、水なのかお湯なのか、本当に体から嫌なものを洗い流せているのか実感が持てなかった。
それどころか―――。
「はっ……最低だな……。」
いわゆる『疲れ〇〇』というやつだ。
本体は立っていられない程だというのに、男のあの部分がバカみたいに上を向いてる。
男の生理とはいえ最悪だと思う。
どうするんだよ、これ………。
もう自分で抜くのも面倒くさい。
いじる気力も無い。
なんなんだよ。
もしかしてこっちが僕の本体だったりして、という考えがちらりと頭を掠めた。
そうかもしれない。
これが人間を動かす原動力なら、 《 僕 》 の方こそ飾りだ。
個体は遺伝子を通すための筒、という話をどこかで聞いたような気がする。
だとしたら僕は役目を果たしたのかな。半分くらいは。
体は全くいうことを聞かないし、頭もぼんやりしてる。
なんだかずーっと前から水を浴び続けてるような気がした。
ああ、お湯だよな。
だめだ、やばい。
このままもう寝た方がいい。
寝てしまえば“コイツ”も治まるだろう。
疲れすぎたんだ。
体のコントロールが利かないくらい。
胸がざわついて、足元がふわふわして。
気がつくと。
彼女を見下ろしていた。
つい習慣でこの部屋へ来てしまったのか、寝る前にもう一度顔を見たかったのか、何故ここに立っているのか自分でもわからなかった。
立ち去るべきだ。
どうせこんな体ではデキはしない。
機嫌を損ねるに決まってる。
熱い。
抑えられない。
触りたい。
そこに。
すぐそこに。
触れられるはずだったのに、耳から進入した不快な音が僕の脳を貫いた。