Deep river 5
少し浅いな。
まあ仕方ないか。いきなり凄腕になられても気味が悪いし。
それに、いまのは私が急かしたんだし。
ホープは私の上で弛緩している。
背中でたくし上げられた服が丸まってて、寝心地が悪いので全部脱いだ。
一応まだ繋がったままだ。
顔が近付いてきたので合わせてやった。もう慣れたとでもいう風に彼の方から舌を入れてくる。
このままもう一度、と思ったが軽く締めたのが逆効果で、押し出されて外れてしまった。
ホープが残念そうな声を発した。
一応拭いておこうか。サイドボードにティッシュペーパー代わりに重ねておいたガーゼを使った。消耗品は、いくら金があるといっても手に入る量は限られている。
しかしすぐになくなりそうだ。
「あの、それまだ沢山あります?」
ホープにも、もちろん持たせてやった。
「お前の言う沢山がどれくらいか分からないが、替えはある。」
取りに行くのは億劫だが。
「どこですか?僕、取ってきます。」
まあ、主にお前がこの汚れの原因だしな。
「シャワールームにタオル類と一緒に置いてある。廊下の表示を見ればすぐに判るはずだ。」
ホープは、はいと返事をした後、一瞬辺りを見回してから少し恥ずかしげに裸のまま廊下へ歩き出した。
壁で姿が遮られる際に、バスタオルも借りたいと言うので、好きにするように言ってやった。
見れば見るほど子供……、むしろ小動物のようだ。無邪気にじゃれ付いてくる。
ペットも悪くないかもしれないな。
美少年をはべらせるのは最高の贅沢だというし。
今、警察は機能しているんだろうか。誰かに知れたらここに踏み込んできたりするのか。
まるで転落人生だ。笑えないな。
いつも通りの、一人になった部屋の窓から外を見た。
あの時見上げたコクーンは禍々しい光を放ちながらも生きていたが、今は死んで星空に暗黒の穴を穿っている。
私の心と同じ。
この穴はホープでは満たせない。
代わりなんてないんだ。あんな物、もう空っぽで支える必要なんてないんだから早く帰って来い。
ファングのあの燃えるような眼差しを思い出した。
私の冷めた目とは違う。熱い闘志の持ち主。
私がこの先、誰かのためにあんな目をすることがあるだろうか。
あれを見ていると、つい考え込んでしまう。
その時、戻ってきて私を背後から抱きすくめたのはホープだった。
ホープ。
希望。
代わりではなくとも、これが私に残された希望なんだろうか。
しかしだからといって、こういう関係になる必要はないだろうに。
うなじに唇が這う。
髪に指が通り、耳をくすぐられる。
あまり色々知りすぎていると可愛げがないぞ。
口に入ってきた指に、一度舌を巻きつけてから軽く噛んだ。
そうしたら引っ込めるかと思ったのに、しぶとく口の中を撫で回す。
背後に硬いものが当たっている。唾液にまみれた指が下へ向かう。
もうそこは良く知った場所だろう?何度もそこへ入れたんだから。
何をそんなに確かめたいんだか。
片手でしっかり私の乳首をつまみながら、もう片方の手で私の中を探索している。
「観察日記でもつけるつもりなのか?」
ちょっとしつこかったので、そう声を掛けた。
「わあっ、す、すいません。」
没頭していたな。子供はこれだから。
「日記なら、毎日来なくちゃいけませんね。」
なまを言って。
「ふ…、私もつけてやろうか?何月何日、今日は前回の測定より何ミリ伸びていました。」
「ちょ……、何がですか。」
「……身長。」
「嘘。」
なんだか可笑しくなって、声を抑えて笑った。
「酔っているんですか?」
そんなには飲んでいないが。
「そうかもな。」
曖昧に答えた。
飽きもせずまた私を押し倒す。
「ああっ‥‥」
再び繋がる。
ホープが私を愛しそうにしている。私を宝物か何かと勘違いしているようだ。
ああ、大事な獲物か。
こんな風に体を揺すられても、心まではまだ届かない。
私の心を揺さぶるのは……。
急に動きが止まった。
ひと休みか?
ホープの呼吸が荒い。私もか。
見るとホープは上体を起こして髪をかき上げている。
その姿が妙に、危険なまでの色気を発しているような気がして思わず背筋がぞくりとし、全身の皮膚が粟立つような感覚に襲われた瞬間、また急に動き出されて悲鳴に近い声を上げてしまった。
こういう事にも転がり落ちるようにという表現を使うのだろうか。
とにかく、あまりに急激だったために、ほとんど反射的に体が逃げてしまった。
だがそれをそのまま逃がす男は居ない。
ホープに両手で腰をがっちり押さえられ、引き戻された。
もちろん繋がったまま。
もう二度目だから、私がこんな声を出すのがどういう状態かわかっているだろう。
腰の辺りがむずむずぞわぞわする。
この浮遊感、というか落下感。ああ、同じか。
これは、矛盾するようだが不快だ。
不快だからこそ、早く、早くあの最高潮の場所へ行きたくなる。
もう少しなんだ。
さっきとは違う、強い波に足を取られ、体が引き波にさらわれてしまうような感覚。
あと少し。
ほら、もう……。
何かを掴む力もない。
もう少しで。