まあ、最初よりは上手くなったと思う。
回数をこなせば誰だって少しは上達する。
私が彼と寝るのは、そこにいるからという理由に過ぎない。
同じ家で暮らしているのに、何もしないでぎらついた目で見られたりしたら、うっとおしい事この上ない。

彼だけの話ではない。
私の方だって……。
妊娠したら性欲はなくなるのかと思っていた。
それがどうだ、実際は前と全く変わらず、ただやりにくくなっただけだ。

前からやると、自分の体の上にべったり男の体を乗せることが出来ない。
それだと胸の辺りがとても淋しくなる。
物足りないんだ。
必然的に後ろからが多くなってくるが、何も無かった頃は安心して背中を預けられる頼もしい仲間だったのに、こうなってからは反対に敵に背中を見せているようで落ち着かない。

敵だ、いまは。

私を疲れさせ、悲鳴を上げさせることに無上の喜びを感じているのだから。


子供のくせに。
いつもそう思う。
けれど夜、暗闇の中でその声を聞くと、全く知らない男が傍に居るようでドキリとさせられる。
明るい所で見れば以前とそう変わらない子供なのにだ。

魅力がないわけじゃない。
顔を見れば花の様な美少年だし、華奢ながらもやはり少年らしく、体のそこここがごつごつしていて“男”を感じさせないこともない。
見た目だけでもなく、細かいことには良く気がつくし、最近は家畜の世話もだいぶ任せられるようになって来た。
見回りとチョコボの慣らしを兼ねて、一人でヤシャス山のほうへ出掛けていく事もしばしばあるほどだ。
出会った頃よりも見違えて頼もしくなっている。
ルシの力など無くとも、精神的な成長を遂げているのは明らかなのだ。

それがまるで犬のように私に隷属している。
別に奴隷が欲しいわけではないのだが。
でもきっとそうやって何でも言うことを聞いてるように見せかけておいて、その実は………。


その時どういう風の吹き回しだったのか、以前に頭の中で勝手に考えていたつまらない妄想を実行してしまった。
そうしたらもう―――、互いの欲望が際限なく溢れ出してきて止まらなくなってしまい、誘いながらもつれながら寝室に引き入れて朝まで貪りあうという痴態をくりひろげた。
そしてそのまま毎晩同衾するようになってしまった。

誘ったのは私なのだし、たぶん私の方が先に欲情したんだ。
目の前の少年が獲物に見えた。
狩って食らおうとしたのは私だ。

裸に剥いて嘗め回して締め上げてやろうと思った。
怯える様が見たかった。
恥らうところを目にしたかった。
突然 “男” を剥き出しにして、『子供が大人の女を犯しにかかる』という場面を見てみたくなった。

愛なんかではない暗い愉悦。

腹に子供がいてもこんなケダモノになれるなんて。
もっと神聖な物だと思ってたのに。そんなにすぐに変わることなんて出来ないか。

生まれたら変わるんだろうか。

何人産んだところで殺した罪が帳消しになるわけでもないのに、神聖な物になんかなれるわけないな。
その前に、神聖な物になりたいのか私は。
おこがましいとはこの事だろうに。
それでも、自分の子からは……、いやその子に対しては、そうありたいと思う。

『愛の結晶』などという言葉があるが、愛なんてなくても子は出来る。
この腹がいい例だ。
愛がなくても番えるのだから。

愛なんて無くとも毎晩抱き合える。
ホープは私を愛していると言うかもしれないが所詮は子供の言う事。
それを愛だと認めたとしても……、やはり子供の愛だ。
私はそれを分かっていてそれには応えず、それでいて愛欲の虜にする悪女だ。
神聖などとは程遠い。


それでも、このまま家族になっていずれ愛したりするんだろうか。
この坊やと家庭を持つなんて……異常だ。
おかしい。
だが………常なんて何処に行った?

一つの世界が終わって、みんな目茶苦茶になって……そんな壊れた世界でも隣にパートナーがいることは幸せなのかもしれない。
私が彼を愛せるかどうかわからなくても。
彼がすぐに年上の女に飽きてしまっても。

そう開き直ってしまえば、優しくなれる気がする。
もうとっくに悩んでいい時期は過ぎているのだから、私こそが気持ちを切り替えるべきなのだろう。


後ろで寝ていたホープが腕を巻きつけてきた。
中途半端に広い部屋に、ぽつんと置かれたシングルベッド。
絡み合って眠る男女。

もう認めざるを得ないな。

これは夫婦であると。

でもしばらくは、ホープには言わないでおこう。